ひとりだけ
「……自己紹介が先じゃないの?」
ショートヘアが小馬鹿にしたような口調で言う。
「は? 何、お前。さっきからオレのこと、なんかバカにしてない? マジうぜぇんだけど」
「すぐキレるの、やめてくれる? だからヤンキーって嫌いよ」
ショートヘアもキレやすそうだけど、と冷めた目で見ていると、銀縁メガネが仲裁に入った。
「だってあの女がっ!」
と、なだめられても怒り続けていた金髪に、
「仲良くしようよ。今、この状況を整理したいし」
なんて優しい声を出したのは、さっき探るような目をしていた彼女だった。
(何か、さっきと様子が変わった気がする)
さっきと違って、今は可愛い子ぶっているように見える。
そんな彼女は、くるっとした瞳でみんなを見て、こう言った。
「私の名前は、樋口 マミ。県立C高校の二年生です」
「……樋口 マミ、さん?」
銀縁メガネが、探るような目つきだった、マミに尋ねる。
「あの、オレのことは知っていますか?」