一生分の愛情をもらいました。

更なる二人の試練

ある日、華は友人たちと一緒に郊外のレジャー施設で楽しい一日を過ごす予定だった。
晴れ渡る空の下で、笑い声が響き、すべてが順調に見えた。

しかし突然、園内で大きな音が響き渡り、辺りが慌ただしくなった。何かが爆発したのか、それとも車両の事故なのか、原因はすぐには分からなかったが、すぐに施設内は混乱し、スタッフたちが叫び声を上げて駆け回っていた。
華は驚いて周囲を見回し、何が起こったのか把握しようとした。
しかし、次の瞬間、施設内の一部が崩れ落ち、倒れた柱が華を含む数名の人々を巻き込んだ。

「大丈夫!?」

華は叫び、慌てて周りの友人たちを確認したが、瞬く間に人々の声と物音が重なり、避けられない混乱が起きていた。
悲鳴や叫び声が響き渡る中で、負傷者たちがあちこちに倒れていた。
華はその状況にすぐに反応し、隼人から聞いていたことを思い出しながら行動を起こした。

隼人は医療現場でよく見かける光景を華に話していたことがあった。
パニックに陥った人々や、痛みで動けない人々への対応方法。声をかけ、安心させることがどれだけ大切かを教えてくれた。
華はその言葉を思い出しながら、まず最初にパニックになっている女性に駆け寄った。

「大丈夫ですか?大丈夫ですよ、私がいますから、安心して。」
華は優しくその女性の肩に手を置き、落ち着いた声で声をかけた。女性は泣きながら自分の腕を抱え、震えていたが、華の穏やかな声を聞いて、少しずつ呼吸を整えていった。


「よし、深呼吸しましょう。助けが来ていますから、もう少しの辛抱ですよ。」
華はその女性の手を握り、じっと目を見つめて安心させることに集中した。
隼人が教えてくれたように、冷静でいることが、相手の恐怖を和らげる第一歩だった。


その後、華は他の負傷者のところにも向かい、声をかけていった。

「大丈夫、すぐに助けが来ますから。」
彼女はそんな言葉をかけながら、隼人や他の医療スタッフが到着するのを待った。負傷者の処置をしている隼人の姿を見つけると、華の心は少しだけ軽くなった。

「華…!?」
隼人は驚きと顔を見せたが、
「隼人…私は大丈夫よ。」

華は痛みが少しあったが、自分のことを気にする暇もなかった。負傷者の中には、もっと重傷を負った人たちがいる。
隼人は何も言わずに彼女を見つめ、そして負傷者の処置を優先して行った。

「華、待っててくれ。君のことも確認するから。」
隼人はそれだけ言い、すぐに重傷者の処置を進めていった。

その姿を見守りながら、華は自分の軽い傷に気を取られるのをやめた。隼人の仕事に対する真剣な態度とプロフェッショナリズムに心から尊敬の念を抱くと同時に、彼が無事に他の人たちを助けることを最優先にしていることが分かり、胸が締め付けられた。

一方で、隼人は負傷者たちの搬送準備を進めながら、彼女が他の人々を優先している姿を見ると、どうしても気が抜けない。
彼女が負傷していることを心配していたが、華が自分の傷を無視して他の人を助けようとする姿に、隼人はますます彼女に惹かれていった。

事故現場での騒ぎがようやく落ち着きを見せ始めたころ、隼人は華の姿を見つけ、無意識に駆け寄った。
しかし、目の前で立ち尽くしていた華の顔色が少し青ざめているのを見て、隼人は心の中で一瞬、不安がよぎった。

「華、大丈夫か?」
隼人は心配そうに問いかける。その目には、彼女が無事であることを確認したいという気持ちが強く表れていた。

華は軽く手を振りながら微笑んだ。
「本当に大丈夫よ。軽いけがだし、何ともないから安心して。」
彼女の言葉には自信があったが、隼人の顔には明らかな不安が浮かんでいた。

「でも、顔色が少し悪いし…やっぱり、ちゃんと見せてほしい。」
隼人は言葉にできない不安を抱えながら、華の体調を気にしていた。普段冷静でいられる彼も、華に対してだけはどうしても感情が高ぶってしまう。


華はその言葉に少し驚き、そして再び笑顔を作ろうとしたが、隼人があまりにも心配そうにしているので、少し戸惑った様子で言った。
「本当に、私、大丈夫だから。隼人も他の患者さんのところに行かないと。」
彼女は隼人の顔を見つめ、優しく言った。

だが、隼人はその言葉を簡単には受け入れなかった。彼は一度深呼吸をしてから、冷静に言った。

「華、もし何かあったら俺が後悔する。だから、俺が見てからでないと心配だ。」
隼人は決して譲らない様子だった。

その時、救急車の到着を知らせるアラームが鳴り響き、隼人はその場を急いで離れる必要があった。
病院から要請されたドクターヘリが現場に到着し、隼人はすぐに医師としての役目を果たすため、現場に戻らなければならなかった。

「ほら。行って!頑張ってね」

「華、俺が戻ったら必ず見てやるから。」

隼人は、華を心配しつつも冷静に指示を出した。
「でも、必ず後でチェックするから、救急車で病院に行って、少し休んでおけ。」
隼人の言葉には、華を大切に思う気持ちがにじみ出ていた。

この行動があとから隼人は後悔をすることになる。


華は、隼人の真剣な表情を見て、少し迷いながらも、頷くしかなかった。
「わかったわ、隼人。」
華は静かに返事をし、近くにいる軽症者たちと一緒に救急車に乗り込んだ。
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