一生分の愛情をもらいました。

隼人SIDE

隼人はその日も忙しい勤務の中、次々と運び込まれる患者の診察と処置に追われていた。
午後の診察が一段落ついたとき、看護師がカルテを持ってきて次の患者の情報を伝えた。

「軽傷の女性です。交通事故ですが、子供を守った形だとか。」

その一言に、隼人の中に不思議な予感が走った。

「神崎華さんですね。診察室3でお待ちしています。」

名前を聞いた瞬間、彼の手が一瞬止まった。
「…神崎華？」

まさか――そう思いながら診察室に向かう足が少しだけ速くなった。

診察室の扉を開けると、目の前の診察台に座っていたのは紛れもなく、あのバーで出会った華だった。

彼女は少し驚いた表情で彼を見上げたが、すぐに軽く笑みを浮かべた。
「南野さん…？」

隼人も一瞬驚きを隠せなかったが、すぐに医者としての冷静さを取り戻した。
「…やっぱり、神崎さんだったんですね。」

彼女の傷を確認するため、隼人は診察を進めながら言葉を交わした。

「事故の状況、聞きました。横断歩道で子供を助けたって？」

「はい…でも、少しだけ気が回らなくて。」
彼女は申し訳なさそうに言ったが、その表情にはどこか誇らしげなものも感じられた。

「無茶しましたね。でも、素晴らしい行動だと思います。」
隼人は正直な気持ちを言葉にした。

華は少し照れくさそうに目を伏せた。
「でも、こうしてお医者さんに診てもらうことになるなんて思ってもみませんでした。」

彼女の膝や腕の擦り傷に薬を塗りながら、隼人は自分でも驚くほど丁寧に処置をしていた。気づけば、彼女を傷つけることが少しでもないようにと配慮していたのだ。

「これで大丈夫です。あとは無理せず、しばらくは安静にしてください。」
隼人はそう言いながら、彼女の目を見て微笑んだ。