一生分の愛情をもらいました。
隼人SIDE

隼人は、その夜も忙しい一日を終えて自宅に戻っていた。救急医療の仕事は毎日が戦場のようだが、診察室で再会した神彼女の姿が、何度も頭をよぎっていたのだ。

「まさか、こんな形で再会するなんてな…」

彼女が横断歩道で子供を助け、自分の身を顧みず行動したことを聞いたとき、心がざわついた。大きな怪我ではなかったものの、あの状況でそんな行動を取れる人はそう多くない。あの夜バーで話した彼女の芯の強さが、再び隼人の心に深く刻まれた。

ソファに腰を下ろし、スマートフォンを手に取る。診察中は「担当医」として接したが、今はもうそれだけの関係ではないと感じていた。

「どうしても、もう一度ゆっくり話してみたい。」

隼人は少し迷いながらも、思い切ってメッセージを送ることにした。


「こんばんは。突然の連絡、ごめんなさい。今日の診察の後、少し疲れた顔をされていたので、ちゃんと休めているか気になってメッセージしました。」

送信ボタンを押した瞬間、少し胸が高鳴るのを感じた。返事が来ないかもしれない。けれど、彼女の無事を確認したい気持ちの方が勝っていた。

数分後、スマホが震えた。彼女からの返信だった。


「こんばんは。ご心配ありがとうございます。今、家でゆっくりしているところです。南野さんも忙しそうでしたが、大丈夫ですか?」

彼女の言葉に、隼人は自然と笑みを浮かべた。まだ大した会話ではないのに、温かい気持ちになれるのは不思議だった。

「これはチャンスだ。」
そう思い、次のメッセージを打ち始める。


「僕は大丈夫です。ありがとう。ただ、今日のことをもう少し聞きたいなと思って。もしよければ、近いうちに食事でもどうですか?」

送信ボタンを押した後、緊張が走った。誘いが唐突すぎたかもしれない。彼女はどう思うだろうか。

しかし、返事はすぐに来た。


「お誘いありがとうございます。ぜひ、行きたいです。いつがご都合いいですか?」

その言葉に、隼人の胸が弾む。彼女が自分の誘いを受け入れてくれたことが、心の中に小さな灯火をともしたようだった。

食事の日程を決めるやり取りを終えた後、隼人はスマホを置いて、ソファに深く座り込んだ。

「なんでこんなにドキドキしてるんだろうな…」

彼女とはまだ名前と少しの会話しか交わしていない。それなのに、彼女の存在が自分の心に与える影響は思った以上に大きかった。

「土曜日か…」

隼人はスマホを手に取り、どこに連れて行こうかとレストランを探し始めた。
< 7 / 27 >

この作品をシェア

pagetop