この想いが、キミに届きますように。
ep.2◆優しい記憶と唯一の存在

「ん〜、やっとお昼ご飯だ!」

「藍、この時間になると元気になるよね」


実習室での授業を終えた私たちは、空き教室にやってくるとひとつの机を囲ってお弁当を広げた。


午後からも専門教科の授業が続くため自分たちの教室には戻らず、こうして隣の空き教室を借りて昼食を摂るのが私たちの日課。


別に教室に戻ってもいいのだけれど、ここは三階。教室に戻るとなると階段を上る必要があるため、近くて何かと便利なこの空き教室を利用することにしている。


「まぁね。……あ!今日の凜のお弁当、もしかしてお母さんが作ってくれたの?」

「うん!時間あるからって、用意してくれて」


食べる?と卵焼きを指差して小首を傾げると、彼女はキラキラとした瞳で何度も頷いた。


「食べたい!」

「どうぞ」


クスッ、と笑ってお弁当箱を差し出す。


美味しい、と顔を綻ばせて、もぐもぐと食べる姿はリスみたいでなんだか可愛らしい。

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