この想いが、キミに届きますように。

「……あれ?凜ひとり?珍しいな」

「あ、(れん)くん……」


藍を送り出したあと、一足早く実習室に戻ってきた私は、先に来ていたらしい一ノ瀬 蓮(いちのせ れん)くんに思わず足を止めた。


彼は、六年生の夏にこの街に引っ越してきた男の子で、年数こそ違うが、藍と同じ小学校からの付き合いだ。


クールな性格と大人びた顔立ちで女子人気が高く、私がいつも彼と話すときに人目を気にしていたせいか、彼も不用意に話しかけてこようとはしなかった。


それがなんだか申し訳なくて、いつかの帰り道で偶然一緒になったときに伝えたら、彼は「別に……。女子同士って結構色々面倒なんだろ?俺もトラブりたくねぇし。気にすんな」とぶっきらぼうにもそう言ってくれた。


その優しさがすごく温かくて……、救われたのをよく覚えている。

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