この想いが、キミに届きますように。
ep.3◇記憶の欠片
9月も半ばに差しかかる今日この頃。
いつも通りの時間に家を出た私は、エレベーターの到着を待ちながら、ちいさく欠伸をした。
今日は一週間の中で、唯一実習のない木曜日。
実習時間を生きがいにしている身としては、少し物足りなさのある曜日ではあるけれど、今日も今日とて頑張ろうとポケットからワイヤレスイヤホンを取り出した。
スマホを操作して、最近お気に入りの曲を再生する。
優しくてどこか温かいメロディーの心地良さに浸りながら、到着したエレベーターに乗り込もうとすると、微かにイヤホンの外から声が届いた。
気になって片耳を外してみると、すぐ近くで誰かが会話しているのが耳に入る。
その内容までは上手く聞き取れなかったけれど、不思議とその声に聞き覚えがあり、私は思わず後ろを振り返った。