この想いが、キミに届きますように。
「あ……」
そこには、蓮くんの姿が。
壁に隠れてよく見えないけれど、僅かに顔を出した鞄には彼のお気に入りだという鍵モチーフのキーホルダーがちいさく揺れて主張している。
……どうして、蓮くんがここに?
小学生の頃に一度彼の家に遊びに行ったことがあるからわかることだが、彼の家はここから五分程歩いた先にあるため、ここの住人として遭遇することはまず有り得ない。
不思議に思って、彼の方をじっと見つめていると、はみ出していた鞄が大きく動きを見せ、こちらの方へと彼が歩き出した。
その足が、すぐに動きを止める。
私の存在に気がついたらしい彼が、目を丸くしてその場に立ち尽くす。
それから数秒見つめあったかと思うと、何事もなかったかのように歩き出し、私の前でまたその足を止めた。