尚美~最後のレディース
強引に連れて行かれた真弓の家は、私の家から徒歩5分位の近所に在る一軒家だった。
「たっだいまー!」
「…お邪魔します」
靴を脱いでいると、玄関に真弓の母親が出てきた。
「あんたまた学校サボったの?」
少し体格の良い真弓の母親は、呆れ口調でそう言いながら出て来ると、私の姿に気付いて視線が合った。
「…あ、初めまして。
片瀬…尚美と申します…」
大人は私みたいな人間を嫌う為、目を背けながら小さく自己紹介をすると、真弓の母親は意外な態度を示した。
「…あらやだ〜、
ずいぶん綺麗な子ねえ…
真弓にも少し分けてあげて」
「いや、無理だろ」
学校をサボり、こんな時間に娘が連れて来た茶髪の不良少女を、真弓の母親は少しも煙たがったりはせず、普通に受け入れてくれた為、私は少しホッとした。