尚美~最後のレディース
「あ、忘れてた」
「…?」
真弓はそう言って部屋から出て行き、しばらくすると薬箱やら氷の入ったビニール袋を持って部屋に戻ってきた。
「これ、口に当ててな」
「……。」
真弓はそう言って氷の袋を渡してきて、薬箱から取り出した消毒液をティッシュに垂らし、私の傷の手当てを始めた。
「…いいって別に。
あいつら警察沙汰になるのにビビって、顔はあんまり殴ってこなかったし…」
「いいから黙って口に当ててろよ。
口とか目元が腫れたら、せっかくの美人が台無しだぞ」
「……。」
「まあ、私の方がちょっと可愛いけど」
「…あっそ」
擦り切れた部分に当てられた消毒液は少しヒリヒリしたが、
それよりも、真弓に受ける傷の手当ては、なんだか心がくすぐったかった。