合法浮気
「はぁ、最悪……」
ハローワークから渡された茶封筒を片手に、大きな溜め息が漏れる。
昨日までこんな所に通うことになるなんて思わなかった。
結婚が駄目になったことを伝えると、親にも嫌み言われるし。実家には帰りたくないから、アパートも探さなきゃ。
前の職場には戻れないし、就職活動が重くのし掛かる。
お腹すいたな。朝から何も食べてないからな。
こんな時でも空腹は感じるものなのか。
生理現象グーと鳴るお腹をさする。
コンビニで菓子パンとペットボトルのジュースを買って近くの公園へ歩いて向かった。
あ、あそこで食べよ。ちょうど目に入ったベンチを目掛けてフラフラと歩き出す。
次の瞬間──、ドンッと何かにぶつかった。
小さな男の子だ。2歳くらいだろうか。ぶつかった拍子にその子は地面にコテンとお尻をついてしまう。
今にも泣きそうな瞳で見上げられて、まるでこっちが悪いみたいなんだけど。
「ふぇ、ふぇえぇ………」
「だ、大丈夫?えーとママは何処かな?」
えー、そっちからぶつかってきたのに私が悪者になっちゃうの?親は何してるのよ。
男の子の目の前にしゃがみ込んで周りをキョロキョロと見回した。
「うええええーーーん!!うええっ、うえっ」
とうとう男の子が声をあげて泣き出してしまった。
これ、完全に私が悪者じゃん。