合法浮気
「すみません、すみません!クリーニング代を出すので……」
男の人が男の子を地面におろして、ズボンのポケットから財布を取り出そうとする。
「智くーん、柊、どうしたの?」
その時、また現れたのは若いママだ。
この子の母親なのだろう。
小さな男の子。よくお似合いの若い夫婦。
家族揃って公園に遊びに来るような、まさに理想的で幸せな家庭なんだろうな。
それに比べて私は、婚約者に振られて結婚の話も無くなり、仕事もなくて実家戻り。
私なんて、きっと一生、結婚もしなくて、幸せな家庭を築くこのなんてできないんだ──。
「ママー、ないてるよ?」
「えっ、何で?柊が何かしたの?」
「大切な服を汚しちゃったんだよ……」
「よしよーし、よしよし」
「柊、手ぇ汚れてるじゃない!その手で人の頭触らないで!」
「すみません、今度は髪が汚れてしまって……」
慌てる親子を目の前にしゃがみ込んで、ボロボロと涙が止まらない。
私はなんて惨めで情けないのだろうか。