合法浮気



「ほら、見て!ここがうち!!」


茉昼さんがスマホを取り出して私に画面を向けて、ホームページ上の画面をスライドさせていく。
その画面には、5つ星ホテルとまでいかないけれどパッとお洒落な感じでレビューも悪くない。
そこに併設されているキャンプ場……らしい。まぁ、近年キャンプブームもあったしね。



「自然がいっぱいですね!」

「そうなんです!凄くいい所なんです!緑はいっぱいだし、夜は星も凄いし!!ね、一緒に働きましょう?」

「でも住むところがなぁ、恥ずかしいですが引っ越し費用とかお金もそんな無いしすぐには……」


茉昼さんがフレンドリーな声のトーンで話してくるから、想像して少しだけワクワクしてる自分がいるのも確か。



「んーと、うちに住むとか?」

「えっ、いいんですか!?」

「実はーうちの父親が、お兄ちゃんに早く結婚しろーってうるさいんですよ」

「……え?」

「仕事先も見付かって、住むところも確保できて、望み通り遠くに行ける。それに、お互いの親も安心させられる。これってお互いに利益あると思いません?」

「茉昼!何言ってんだよ!?」

「えー、だってお兄ちゃんも言ってたじゃん!結婚興味無いのに父さんがうるさいうるさいって」

「それとこれとは話が別だろ?今日が初対面の人に何てことを……」


「だって私分かるもん。凄く分かる。誰も知らない遠くに行きたい、逃げ出したい気持ち……」


これは、新手の詐欺だろうか?兄妹とグルになって、可哀想な私を騙す何らかの詐欺。

でも、目の前の茉昼さんが嘘をついているようには見えなかった。




< 9 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop