合法浮気
「ほら、見て!ここがうち!!」
茉昼さんがスマホを取り出して私に画面を向けて、ホームページ上の画面をスライドさせていく。
その画面には、5つ星ホテルとまでいかないけれどパッとお洒落な感じでレビューも悪くない。
そこに併設されているキャンプ場……らしい。まぁ、近年キャンプブームもあったしね。
「自然がいっぱいですね!」
「そうなんです!凄くいい所なんです!緑はいっぱいだし、夜は星も凄いし!!ね、一緒に働きましょう?」
「でも住むところがなぁ、恥ずかしいですが引っ越し費用とかお金もそんな無いしすぐには……」
茉昼さんがフレンドリーな声のトーンで話してくるから、想像して少しだけワクワクしてる自分がいるのも確か。
「んーと、うちに住むとか?」
「えっ、いいんですか!?」
「実はーうちの父親が、お兄ちゃんに早く結婚しろーってうるさいんですよ」
「……え?」
「仕事先も見付かって、住むところも確保できて、望み通り遠くに行ける。それに、お互いの親も安心させられる。これってお互いに利益あると思いません?」
「茉昼!何言ってんだよ!?」
「えー、だってお兄ちゃんも言ってたじゃん!結婚興味無いのに父さんがうるさいうるさいって」
「それとこれとは話が別だろ?今日が初対面の人に何てことを……」
「だって私分かるもん。凄く分かる。誰も知らない遠くに行きたい、逃げ出したい気持ち……」
これは、新手の詐欺だろうか?兄妹とグルになって、可哀想な私を騙す何らかの詐欺。
でも、目の前の茉昼さんが嘘をついているようには見えなかった。