オブラート






「ねえ、拓真くん。美咲さんの知り合いなの?

今日の、追悼の人…」






下に降りるエレベーターの中で、私は拓真に聞いた。






「美咲の後輩で、うちによく遊びに来てた先輩。

俺とリンの事、弟みたいに可愛がってくれてたんだ…」



「そっか。真也さんって人は?」



「美咲の一個上。その人の彼女も、うちの中学出身だから、優しくしてくれるよ、多分」



「そっかあ…」







私達が学校でつまらない授業を聞いている間、この二人は色々な世界を見てきて、色々な人たちと交流してきた。







「……。」






知らない人の名前を口にする拓真を見ると、私はなんだか切なくなり、私の知らない拓真は、例え去年の話だったとしても、百年くらい前の話のように遠く感じ、




少しイライラするのは、

私の独占欲が強いからだ――









< 50 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop