オブラート
「ねえ、拓真くん。美咲さんの知り合いなの?
今日の、追悼の人…」
下に降りるエレベーターの中で、私は拓真に聞いた。
「美咲の後輩で、うちによく遊びに来てた先輩。
俺とリンの事、弟みたいに可愛がってくれてたんだ…」
「そっか。真也さんって人は?」
「美咲の一個上。その人の彼女も、うちの中学出身だから、優しくしてくれるよ、多分」
「そっかあ…」
私達が学校でつまらない授業を聞いている間、この二人は色々な世界を見てきて、色々な人たちと交流してきた。
「……。」
知らない人の名前を口にする拓真を見ると、私はなんだか切なくなり、私の知らない拓真は、例え去年の話だったとしても、百年くらい前の話のように遠く感じ、
少しイライラするのは、
私の独占欲が強いからだ――