華の咲きかた








「…どうしたの美咲」




「別に…なんでもない…」







綾は突然怒鳴った私の顔を不思議そうに覗き込み、



次の瞬間、

綾は前を見て、何かに驚いた。







「えっ…ちょっと美咲、

京介の奴、何しようとしてんの‥‥」




「……え」









うつむいていた私が顔を上げ、前を見ると、



京介は先頭を追い抜き、

一人で先にある交差点に突っ込んで行った。








「あいつまさか…

一人で信号止めやる気なの!?」








国道の大きな交差点の、ど真ん中に突っ込み、道路を行き交う車の流れを止めて仲間の集団を通過させる信号止め。



深夜とは言え、長距離トラックやタクシーがすっ飛ばす中、赤信号で突っ込めばタイミングが悪ければ命を落としてしまう。





昔と違い、暴走行為に命をかける根性のある奴が少なくなった今、単独で信号止めに入る様な男はめったに居なく、



私達の地元では、兄貴と真也さんがたまにギャラリーに見せるパフォーマンスとしてやるくらいだった。








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