クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない

4・デュランの秘密

『もう随分と経つが、まだ実行していないのか?』

「……は。申し訳ございません。なかなか良い機会に恵まれず」

 暗がりの中、魔法ビジョンの向こうで、中年の男が話している。
 魔法ビジョンとは、離れた相手と顔を見て話せる通信手段である。お互いの顔と名前を認知していれば、その魔法を唱えるだけで通話ができる。その男と会話をしているのは。

『もしやお主、情が移ったのではあるまいな? お主に任せたのは失敗だったか?』

「とんでもございません。一刻も早く、それはわかっております」

『うむ。よいか、もうあまり時間は与えられない。一刻も早く処分するのだ! ミタは危険なものだ。手遅れにならんうちにな……。デュラン』

「わかっております……大佐」

 デュランは魔法ビジョンを切断し、こぶしを握り締めた。

「どうしたら、よいのだ……」
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