クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない
 デュランに言われ、セイラは金庫を探した。たくさんあって、どれがどれだかわからないが、資料類は一番左の金庫だと管理帳に記されていた。

「デュラン、セイラ、あったか!?」
 ノキアがやっと金庫室に辿り着く。

「今、探しているところです」
「リザンブルグの紋章……。あった、これだわ!」
 セイラは、巻物状になっている重要書類を筒にしまい、懐に入れた。

「では、早く脱出を」
 デュランが二人を促すが、セイラは金庫の中のもうひとつの物に気がついた。
 水晶のような宝石が金庫の中で輝いている。セイラは、思わずそれに見惚れ手を伸ばす。

「なにかしら、これ……。とっても綺麗……」
「セイラ、なにをやっている。早くしないと……」
 ノキアの言葉を余所にセイラが水晶を手に取ると、警報が鳴り響いた。どうやら、防犯用の魔導具だったようだ。

「えっ!?」
 あわてて水晶を元に戻すが、警報は鳴り止まない。それどころか、金庫室の扉が閉まろうとしている。

「まずい! 二人とも走れ!」
 デュランの掛け声で、一斉に走り出した。扉は間一髪ですり抜けたが、警報で警備兵がこちらに向かっている姿が見えた。

「まずい……。ノキア殿、警備兵は私が引き付けておく。セイラ殿を頼む」
「わかった。セイラ、道を教えてくれ」
「わ、わかったわ、こっちよ!」
 ノキアとセイラは、走り出した。
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