クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない
「デュラン、大丈夫かしら?」
 走りながら、セイラがノキアに問いかける。

「デュランなら大丈夫だ。私の最期を看取るまでは、絶対に死なない」
「……えっ?」
 どういう意味だろうと、セイラは目を見開く。

「それよりも、人の心配をしている暇はなさそうだぞ」

 二人の目の前には、王子と警備兵数人が立っていた。

「そんなことじゃないだろうかとは思っていたけれど、まさか本当にこうなるとはね」

 ノキアは剣の柄に手をかけ、セイラを背に庇うように立った。

「読まれていたのか?」
「多分……。それに、王子ならわたしと一緒で、隠し通路も知っている。先回りも可能だわ」
 後もどりはできない。しかし、前方には王子と警備兵。逃げ場はない。
 王子は肩をすくめ、やれやれといった風に首を横に振った。

「残念だよ。君のことは信じていたのに……」
「なに言ってるのよ! そっちが先に盗んだんでしょう!?」
「セイラ!」
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