クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない
 動きを読んでいたノキアは、かろうじて避けたが、衝撃でウィッグと眼鏡が飛んだ。

「あの近距離で避けただと!? くっ……拳銃はまだ試作段階で、連続では…………え?」
 ウィッグと眼鏡の飛んだノキアの姿を見て、王子は困惑した。ノキアは、念の為もう一つ、ローズピンクのウィッグを身につけていたのだ。

「セイラ殿が、二人……? どうなってるんだ……?」
 その隙を見て、ノキアはセイラの手を掴み、引っ張った。

「今だ、走れ!」
「しまった! これは使いたくなかったが……仕方がない!」
 王子は、最後の手段に何かを投げた。

「いけない! あれは、アイゼン最新型の爆弾よ!」
「なにっ!?」
 ノキアが、セイラを抱きかかえようとしたその時、セイラがつまづいて転んだ。

「セイラ!」
「大丈夫、走って! あっ……!」
 起きあがろうとした拍子に、書類の入った筒が転がり落ちた。

「ダメだ、戻るなっ……!!」
 ノキアは制止するが、セイラはそれを慌てて拾う。
 再び走り出すと、すぐにノキアがセイラの手を引っ張った。しかし、それとほぼ同時に爆弾が光を放った。ノキアはセイラを胸に抱きかかえ、伏せようとしたが遅かった。爆発の直撃は逃れたが、爆風で廊下の向こう側まで吹き飛ばされ、体を強く打った。城壁が少々崩れ、細かい破片がノキアの上に降り注ぐ。

 ノキアは、ほんの少しの間だけ、気を失った。
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