クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない
 セイラが隠れているところまで戻った二人は、気を失っていたセイラを抱え、隠し通路の出口へ急いだ。途中、警備兵が大勢出てきたが、デュランとノキアが剣を振るえばほぼ無敵だった。できれば争いなしで済ませたかったが、やはりミタの剣士に争いごとは避けられない運命なのだと、ノキアは改めて感じていた。

 五体満足とは言えないが、三人は無事帰ってきた。
 セイラを王宮医師に任せた後、書類を大臣に渡す。
 
「うむ、ご苦労じゃった。貴殿らも疲れたであろう。え、……え? セ、セイラ様!?」
 ノキアの姿を見て、大臣が驚いた。そういえば、ウィッグがそのままだった。

「あ、ああっ! こ、これは、あ、あの、その……!」
 慌てふためいているノキアの前にデュランが立ち、膝をつく。
「大臣殿、申し訳ございません。王女は、その……まったく無事とは言えず……」
 セイラの意識は、まだ戻っていない。

「ひ、姫様が……! お、お主ら! あれほど姫様が第一だと言ったのに……!!」
「申し訳ございません! 私の、私のせいです……!」
 ウィッグを脱いでノキアが膝をつき、深々と頭を下げた。
「ノキア殿……!」
「ノキア殿のせいじゃないだすよ! 元はといえば、盗んだあいつが悪いんだす!」
 心配で様子を見に来ていたスタンも、ノキアを庇った。

「うむ、しかし、姫様がこうして傷ついていることは事実じゃ。こうなっては、仕方ありませんな。お主ら二人、姫様の意識が戻るまで、ここにいてもらいますぞ。それに……」
 大臣は、ノキアの姿を見てにんまりと笑った。
「どうやら、ノキア殿は姫様と姿形も瓜二つな様子。ここはどうじゃろう。しばらくの間、姫様の代わりになってくれんか?」
「え、ええええっ!? む、無理、無理です!」
「いや、もうこれは命令じゃ! 姫様の無事を確保できなかった罰として受け取ってもらいたい!」
「デュランーー」
 ノキアは、デュランに泣きついたが、「まあ、仕方がありませんね」と返された。

 ノキアとデュランは、リザンブルグの客将として、正式に迎えられることになった。国王と王妃も、ノキアの姿を見て驚き、まるで自分の娘がもう一人できたようだと抱きつかれた。
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