クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない

8・決めたこと

 数日後、セイラの意識が戻り体調も回復し、ノキアは王女生活から解放された。しかし、王女と瓜二つの人間が歩き回るのは禁止され、眼鏡の変装を余儀なくされた。
 そうなれば、ノキアとデュランがここに留まっている理由はなくなる。明日にでも旅立とうかと相談していたところ、セイラに「もう一日だけ」とせがまれて、一日延期となった。なんでも、パーティーを開くということなのだが、詳しいことは教えてもらえなかった。

「我々の送迎会、というわけではなさそうですね」
 デュランが、考え込む。
「うん。でもまあ、これで変装しなくて済むと思うと、気が楽だな」
「しかし、淋しくなりますね」
 デュランの言葉に、ノキアはうつむいた。
「……そうだな」

 旅立つということは、別れの始まりでもある。セイラやスタン、城の人間と別れの時がやって来る。それは仕方のないことなのだが、ノキアとセイラはお互い、今まで同年代の同性の友人がいなかった。そのはじめての友人が、自分と瓜二つの人間であったことが、余計に淋しさを募らせる。

「私、セイラと話してくる」
「ええ、その方がいいでしょう」
 女性同士ふたりきりでと、デュランを置いて、ノキアはセイラの部屋を訪ねた。
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