クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない

10・ぶつかり合う想い

「デュラン。私は、間違っていたのだろうか?」
「なにをです?」

 城下町を抜け、静かになり始めた街道沿いを歩きながら、ノキアはデュランに訊ねる。もうすぐ乗合馬車の停留所が見える頃だった。ようやく身代わり生活から解放されたと言うのに、ノキアの心は晴れないままだった。

「セイラは、身を挺して戦争を止めようとした。だが、私は何もできない……。それどころか、ミタの後継者から、カーラウト家から逃げ出し、のうのうと生き延びている」
 その言葉を聞いたデュランは、少し眉を寄せ冷静に答える。
「仕方がありません、ミタには危険がつきものです。逃げなければ、安息の地はありません」
「だが、こうやって逃げていても、いつかは戦乱に巻き込まれるのだろう……。それがミタの運命だと言うのなら、私はどうしたらいいんだ……」

「では、ミタの名を捨てることですね」
 突き放されたような言葉に、ノキアは反射的に顔を上げ、デュランを強く見つめる。
「それはできない! セイラは身を挺したのだぞ! 私だけ逃げるわけないはいかない!
それに……ミタの継承者がいなくなれば、おまえも困るのではないか?」
 ノキアの問いに、デュランの険しい顔が、さらに険しくなる。

「どういう意味です?」
「私が、なにも知らないとでも思っているのか?」
 ノキアは、デュランをまっすぐに見た。デュランは、観念したのか短く息を吐く。
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