クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない
「……いつからです?」
「気づいたのは最近だ。でも、なぜ? なぜ、私を殺さない? 正式にミタを引き継いでいないからか?」
「あなたが本気を出せば、私は敵いませんので」
「ふざけているのか?」

 デュランは冗談を言うタイプではない。しかし、そんなわけはないだろうと、ノキアはむっとする。

「では、勝負しますか?」
 デュランは、目を細め剣を抜いた。ノキアは剣の柄に手をかけるも、抜くことをためらう。

「……勝負をする意味がない」
「勝った方がミタの後継者です」
 言いながらも、二人は通行の邪魔にならないよう、街道から外れたところへ少し移動する。

「それは、お互いワザと負けようとするのでは?」
「私が手加減するとでも?」
「……いや、しないなッ……!」

 言いながら、ノキアは細身の長剣(ロングソード)を抜き先手を打った。
 しかし、デュランはすでに剣を抜いていたため、それを簡単に受け止める。
 しばらく、剣が交差する音が響いた。ノキアの細身の剣はその軽やかさで素早い攻撃を繰り出し、対してデュランは力強い斬撃で応戦する。その攻撃を避けようとノキアが身を捻った瞬間、デュランの剣が彼女の耳元をかすめ、風を切る音がした。ノキアはそのまま低い体勢になり、素早く地面を蹴って一気に間合いを詰め、その勢いでデュランの脇腹を突こうとする──が、それは数センチ横に逸れた。致命傷を避けるために、ノキアが意図的に逸らしたのだ。勝負は、ノキアの勝利で終わった。
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