クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない
「……うそだ。嘘だっ! 絶対に手加減していただろう!?」
 息を整えた後、ノキアはデュランに詰め寄る。

「していません」
「私の知るデュランは、もっと強かった! そんなにミタの後継者になるのが嫌なのか!?」
 ノキアは、デュランを見上げて捲し立てる。デュランは静かに剣を鞘に収めた後、視線を落とし、自分自身を納得させるかのように言った。

「違います。私の実力は、元々これくらいなのです」
「なにを……!」
「私は魔法協会の人間ですよ」
 言われてノキアは、ハッとした。
 つまり、今までは魔法でなんらかの強化(バフ)をかけていた。

「どうして……」
「強くならなければ、あなたを守る騎士としてカーラウト家に認められないではないですか」

 魔法協会の刺客として潜り込んだのが五年前。秘密裏に行われるはずだった暗殺は失敗に終わった。デュランはノキアの父であるカーラウト伯爵に負けた。その時にミタの門下に入ることを命じられ剣術を身につけた。その間もデュランは、いつかカーラウト家を滅そうと目論んでいた。しかし、五年の歳月を経て、デュランの心は少しずつ変わっていった。デュランの中で、ノキアの存在が大きくなっていったのだ。

「だから……。守ってもらうほど、弱くはないと……」
 ノキアは視線を落とし、困惑した様子で顔を伏せた。
「傍にいたいのです。私の目の届く場所で。勝った方がミタの後継者だとは言いましたが、やはり私はあなたにその名を捨ててもらいたい」
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