クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない
 スタンはデュランの態度に腹を立て、地団駄を踏む。
「むきーーーーっ!! なめられたものだすね!! こう見えてもオイラは城の中では…………えーーーーっと、と、とにかくすごいんだす!!」
「ほう、そうか。では、私も安心してミタの剣術を披露することができるわけだ」
「ミ、ミタの剣術? それは……」
 スタンはたじろいだが、一度抜いてしまった剣を引くことはできなかった。
「いくぞ!」
 デュランの一声と共に、勝負は始まった。
「ひいぃぃぃぃっ!!」
 避けようにも避けられず、勝負は一撃だった。ミタの剣術を出すほどのこともなくデュランの峰打ちが脇腹に当たり、スタンはその場にうずくまった。

 周囲の人々の大歓声に、道行く人々は、何事かと足を止める。
 スタンを探していたブロンドの髪の少女も、その一人であった。
「一体なにがあったの?」
 少女が人ごみをかきわけて、なんとか一番前へ行くと、探していたスタンがうずくまっており、それを見下ろしている剣を持つ男の姿が見えた。
「ちょっと、スタン!? なにやってるのよ!? 探したんだからね!!」
「へっ!? セ、セイラ様!? す、すると、あっちのセイラ様は……?」
 スタンが、セイラとノキアの顔を見比べる。
 セイラとノキア、またデュランも、ふたりの瓜二つな風貌に驚きたたずんでいた。
「これは、驚いた……。こうもそっくりな人物がいるとは」
 ふたりを見比べると、ノキアの髪が若干青みがかっているのと、目の色が違うだけ。それ以外では、ほぼ見分けはつかない。
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