人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
(改ページ)
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45歳で支社長になった蔭木侮太夫は、自分が出世頭だと自惚れていた。
その上、顔もスタイルも申し分ないから、女性社員からは憧れの目で見られているはずだと思い込んでいた。
それと、自分の命令に逆らう部下はいないので、全員が自分に対して一目置いていると確信していた。
それに、本社も自分のことを高く評価しているので、役員になるのも間違いないと信じて疑わなかった。
順調というただ一つの言葉が頭の中に居座っていた。
蔭木はそれを自惚れだと思ったことはなかったし、一度も疑ったことがなかった。
順調、快調、絶好調なのだ。
しかし会社を一歩出ると、それはガラガラと崩れ落ちた。
家では誰にも相手にされないのだ。
「トイレで新聞読むのは止めてよ」
妻が甲高い声を発した。
「もう、お父さん、オナラしないで」
高校生の長女が鼻をつまんだ。
「私がご飯食べている時に爪楊枝でシーハーしないで」
中学生の次女が顔をそむけた。
それだけではない。
妻と娘二人が楽しそうに話している時に仲間に入ろうとすると、「お父さんには関係ないの」と弾き飛ばされた。
家ではどこにも居場所がなかった。
「次の出張はいつ?」
妻と娘たちは彼の不在を期待した。
「あんまりだよな~」
蔭木はふてくされて寝るしかなかった。
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45歳で支社長になった蔭木侮太夫は、自分が出世頭だと自惚れていた。
その上、顔もスタイルも申し分ないから、女性社員からは憧れの目で見られているはずだと思い込んでいた。
それと、自分の命令に逆らう部下はいないので、全員が自分に対して一目置いていると確信していた。
それに、本社も自分のことを高く評価しているので、役員になるのも間違いないと信じて疑わなかった。
順調というただ一つの言葉が頭の中に居座っていた。
蔭木はそれを自惚れだと思ったことはなかったし、一度も疑ったことがなかった。
順調、快調、絶好調なのだ。
しかし会社を一歩出ると、それはガラガラと崩れ落ちた。
家では誰にも相手にされないのだ。
「トイレで新聞読むのは止めてよ」
妻が甲高い声を発した。
「もう、お父さん、オナラしないで」
高校生の長女が鼻をつまんだ。
「私がご飯食べている時に爪楊枝でシーハーしないで」
中学生の次女が顔をそむけた。
それだけではない。
妻と娘二人が楽しそうに話している時に仲間に入ろうとすると、「お父さんには関係ないの」と弾き飛ばされた。
家ではどこにも居場所がなかった。
「次の出張はいつ?」
妻と娘たちは彼の不在を期待した。
「あんまりだよな~」
蔭木はふてくされて寝るしかなかった。