人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
📄 📄
因西太郎は経営企画室の同期から聞いた機密情報に心を奪われていた。
□□が自社を狙っているというのだ。
それが事実なら株価が大きく跳ね上がるに違いない。
自社株で大儲けするチャンスだ。
千載一遇といってもいいほどの稀に見る好機だ。
しかし、自分名義で自社株を売買するわけにはいかない。
もろインサイダーで引っかかってしまう。
ではどうする?
無い知恵を絞り始めた。
そうだ、妻に売買させよう。
いや、ちょっと待て。
妻と自分は同じ苗字だ。
ばれる可能性が高い。
そうなったら大変なことになる。
他に何かないか?
そうだ、妻の親の名義で売買するのはどうだろう。
妻の旧姓はありふれた名字だし、気づかれることはないだろう。
よし、そうしよう。
いそいそと帰宅した因西は着替えを済ませたあと、妻に切り出した。
「ちょっといいかな」
「何?」
「お義父さんて、株やってた?」
「株?」
「そう、株の売買」
「なんで?」
「いや、なんとなく」
「そうね~、やってたような気もするけど……」
「そうか。実はね、うちの株上がりそうなんだ」
「会社の株?」
「そう。だから、お義父さんに頼めないかなって思って」
「なんで? 自分で買えばいいじゃないの」
「そうなんだけど、社員が会社の株を買うのは大変なんだよ。事前に書類を出して承認を得ないといけないし、買ったあとも書類を提出しなければいけない。めちゃくちゃ面倒なんだ」
「ふ~ん」
「で、ね、こっちでお金を出すから、売買してもらえないか、お義父さんに聞いてくれないかな」
「私が?」
「うん、頼むよ」
「う~ん、まあいいけど。でも、変なことになったら嫌よ。変なことにならないって約束して」
「大丈夫、大丈夫、何も問題ない。約束する」
「なら、いいけど……」
因西太郎は経営企画室の同期から聞いた機密情報に心を奪われていた。
□□が自社を狙っているというのだ。
それが事実なら株価が大きく跳ね上がるに違いない。
自社株で大儲けするチャンスだ。
千載一遇といってもいいほどの稀に見る好機だ。
しかし、自分名義で自社株を売買するわけにはいかない。
もろインサイダーで引っかかってしまう。
ではどうする?
無い知恵を絞り始めた。
そうだ、妻に売買させよう。
いや、ちょっと待て。
妻と自分は同じ苗字だ。
ばれる可能性が高い。
そうなったら大変なことになる。
他に何かないか?
そうだ、妻の親の名義で売買するのはどうだろう。
妻の旧姓はありふれた名字だし、気づかれることはないだろう。
よし、そうしよう。
いそいそと帰宅した因西は着替えを済ませたあと、妻に切り出した。
「ちょっといいかな」
「何?」
「お義父さんて、株やってた?」
「株?」
「そう、株の売買」
「なんで?」
「いや、なんとなく」
「そうね~、やってたような気もするけど……」
「そうか。実はね、うちの株上がりそうなんだ」
「会社の株?」
「そう。だから、お義父さんに頼めないかなって思って」
「なんで? 自分で買えばいいじゃないの」
「そうなんだけど、社員が会社の株を買うのは大変なんだよ。事前に書類を出して承認を得ないといけないし、買ったあとも書類を提出しなければいけない。めちゃくちゃ面倒なんだ」
「ふ~ん」
「で、ね、こっちでお金を出すから、売買してもらえないか、お義父さんに聞いてくれないかな」
「私が?」
「うん、頼むよ」
「う~ん、まあいいけど。でも、変なことになったら嫌よ。変なことにならないって約束して」
「大丈夫、大丈夫、何も問題ない。約束する」
「なら、いいけど……」