人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
その週末の夜、高校生の時にバンドを組んでいた友人と久々に夜の街に繰り出した。
気心が知れた彼との食事は楽しくてつい酒が進んでしまい、気づいたら10時になっていて、慌てて店を出た。
駅に急ぐと、うまい具合に快速電車が来て乗ることができた。
これを逃すと最寄り駅からの最終バスに間に合わないのでほっと胸を撫で下ろした。
吊革に掴まって車内を何気なく見ていると、ドア付近にいる二人の男性が目に留まった。
真っ赤な顔の中年男性と青白い顔の若者だった。
上司と部下のような感じで、何やら話していた。
わたしは思わず耳をそばだてた。
すると、
「だ・か・ら、お前はダメなんだよ!」
若者のおでこを小突きながら中年男が言い放った。
かなり酔っているようで、呂律が怪しかった。
「はい、すみません」
小柄で細身の若者が上目遣いに中年を見た。
青白い顔の彼は神経質そうに頬を引きつらせていた。
パワハラに違いない!
わたしは確信した。
会社で虐めて、飲み会で虐めて、帰りの電車の中でも虐めているに違いなかった。
立場を利用して弱い者虐めをしているに違いなかった。
その後も二人のやり取りを聞いていたが、次第にムカムカしてきて、パワハラオヤジを成敗したくなった。
しかし、電車の中で何かができるわけではない。
握った拳の持っていきようがなかった。
仕方がないので、頭の中で成敗することにした。
二人を主人公にした掌編を考えてその中で成敗するのだ。
パワハラオヤジの顔をじっくりと観察した。
すると、悪代官という言葉が浮かんできた。
悪代官か……、
そうだ、間違いなく悪代官だ。
とすれば彼の名前は〈亜久台貫太郎〉がいいかもしれない。
よし、そうしよう。
では、青白い顔の若者はどうだ?
気弱そうで頼りなさそうな感じしかしない。
しかし、パワハラオヤジに対していつか仕返しをしてやろうと思っているのではないだろうか。
多分そうだ。
それなら、彼の名前は〈離弁次郎〉がいいかもしれない。
よし、そうしよう。
二人の名前が決まったので、吊革につかまりながら目を瞑った。
その瞬間、想像と空想と妄想に掻き立てられて、亜久台と離弁の物語が始まった。
気心が知れた彼との食事は楽しくてつい酒が進んでしまい、気づいたら10時になっていて、慌てて店を出た。
駅に急ぐと、うまい具合に快速電車が来て乗ることができた。
これを逃すと最寄り駅からの最終バスに間に合わないのでほっと胸を撫で下ろした。
吊革に掴まって車内を何気なく見ていると、ドア付近にいる二人の男性が目に留まった。
真っ赤な顔の中年男性と青白い顔の若者だった。
上司と部下のような感じで、何やら話していた。
わたしは思わず耳をそばだてた。
すると、
「だ・か・ら、お前はダメなんだよ!」
若者のおでこを小突きながら中年男が言い放った。
かなり酔っているようで、呂律が怪しかった。
「はい、すみません」
小柄で細身の若者が上目遣いに中年を見た。
青白い顔の彼は神経質そうに頬を引きつらせていた。
パワハラに違いない!
わたしは確信した。
会社で虐めて、飲み会で虐めて、帰りの電車の中でも虐めているに違いなかった。
立場を利用して弱い者虐めをしているに違いなかった。
その後も二人のやり取りを聞いていたが、次第にムカムカしてきて、パワハラオヤジを成敗したくなった。
しかし、電車の中で何かができるわけではない。
握った拳の持っていきようがなかった。
仕方がないので、頭の中で成敗することにした。
二人を主人公にした掌編を考えてその中で成敗するのだ。
パワハラオヤジの顔をじっくりと観察した。
すると、悪代官という言葉が浮かんできた。
悪代官か……、
そうだ、間違いなく悪代官だ。
とすれば彼の名前は〈亜久台貫太郎〉がいいかもしれない。
よし、そうしよう。
では、青白い顔の若者はどうだ?
気弱そうで頼りなさそうな感じしかしない。
しかし、パワハラオヤジに対していつか仕返しをしてやろうと思っているのではないだろうか。
多分そうだ。
それなら、彼の名前は〈離弁次郎〉がいいかもしれない。
よし、そうしよう。
二人の名前が決まったので、吊革につかまりながら目を瞑った。
その瞬間、想像と空想と妄想に掻き立てられて、亜久台と離弁の物語が始まった。