人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 物語が終わった。
 目を開けて二人の方を見ると、まだ乗っていた。
 パワハラオヤジはドアにもたれてウトウトしていた。
 青白い顔の若者はスマホの画面をじっと見ていた。
 
 電車が揺れた。
 その瞬間、パワハラオヤジの膝がガクッと折れた。
 床に尻もちをつくと、〈何があったんだ?〉というように目を開けてキョロキョロした。
 
 駅に着いた。
 駅名が告げられた。
 その瞬間、「わっ」と大きな声を出してパワハラオヤジが電車から飛び降りた。
 乗り過ごしたようだった。
 
 急いで階段を登ろうとして足を滑らせた。
 階段の角にぶつけたのだろう、向う(ずね)を抱えてうずくまった。
 その姿を見て、若者が吐き捨てるように呟いた。
「だからお前はダメなんだよ!」


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