人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 メガネをかけた陰気な感じの痩身(そうしん)の男性理容師だった。
 チケットを渡して椅子に座ると、「どうしますか?」と問われたので、「1か月分くらい切ってください。バランスの悪いところがあったら整えてください」と告げて目を瞑った。
 理容師は「1センチくらい切りますね」と言ったきり、無言でハサミを動かし続けた。
 
 ハサミの音が止むと同時に「確認をお願いします」と声をかけられた。
 目を開けると、「いかがですか?」と、仕上がりのチェックを促された。
 正面も背面も鏡で確認して問題なかったので、「大丈夫です」と答えた。
 すると、「ちょっと大きい音がします」と言って、エアウォッシャーでカットした髪を吸い込み始めた。
 シャンプーの設備がないのでこれで綺麗にするのだが、結構吸い取れるようだ。
 最後に髪型を整えて、カットが完了した。
 櫛と袋入りのペーパータオルを受け取って、「ありがとう」と言って店を出た。
 
 カットされている間、『キャラクターの設定』について考え続けていた。
 そのせいか、『人物像』を明確にすることの重要性がなんとなくわかったような気がしたので、善は急げと速足で家に帰り、自室に籠ってパソコンに向き合った。
 
 亜久台と離弁、それぞれの身長、体重、体つき、顔、髪型、年齢、服装、性格、雰囲気、職業、家族構成、生い立ち、趣味、大事にしているもの、嫌いなもの、悩みなどをインプットしていった。
 すると、人となり(・・・・)がくっきりと浮かんできたように思えた。
 それを『だからお前はダメなんだよ!』に入れ込んだ。
 印刷して読み返すと、亜久台と離弁それぞれの葛藤とか悩みとかの心情が表現できているように感じた。
 もう一度読み返して、誤字脱字やおかしなところを直して再度印刷した。
 そして、夕食後、妻に見せた。
 妻が読んでいる間にシャワーを浴びた。
 
 
 
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