人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
📄 📄
「早くご飯を食べて歯磨きしようね」
中々食べ終わらない娘の輝夜に向かって、素羅宙子が急かした。
「パパに会えるって本当?」
輝夜は宙子の顔を覗き込んだ。
「本当よ。今夜会えるわよ」
「わ~い、わ~い、パッパと会える、会えるんだ♪」
輝夜は宙子の周りをぐるぐる回って、歌うように何度も同じ言葉を続けた。
それを笑みを浮かべて見ていた宙子は、輝夜に歯磨きをさせてからベランダへ連れ出した。
「パパは、あそこにいるのよ」
夜空を指差した。
「どこ? どこにいるの?」
「あそこよ、あそこ」
「お月様?」
「そう、そこにパパはいるのよ」
「あんなに遠いとこに……」
輝夜は宙子の手を握った。
「あそこからパパが来るの?」
とても不安そうに言った。
「そうよ。もうすぐ会えるからね」
*
「輝夜、パパだよ」
「パパ~」
輝夜は、パパに向かって手を振った。
「元気かい?」
輝夜は大きく頷いた。
「ママの言うことを聞いて、よい子にしてるかい?」
もっと大きく頷いた。
「とってもいい子よ」
宙子が微笑んだ。
「もっとよく顔を見せておくれ」
輝夜が近づいた。
「ピンクのリボンが可愛いね」
輝夜は嬉しくなってリボンで結んだ髪をくるんとしたが、次の瞬間、輝夜の視界からパパの顔が消えた。
「パパがいなくなった……」
宙子に向かって半べそをかいた。
「大丈夫よ、心配しないで。すぐに戻るからね」
輝夜を後ろから抱きしめた。
「パパ~」
輝夜の呼びかけに応えるように、パパの顔が戻ってきた。
「ごめんね、もう大丈夫だからね」
輝夜はパパの顔を触った。
その瞬間、また、輝夜の視界からパパの顔が消えた。
「パパ~」
今度は呼びかけても、パパの顔は消えたままだった。
「ママ~」
輝夜の目から大粒の涙がこぼれた。
「大丈夫よ。少し待てば会えるからね」
宙子は輝夜の涙を指で拭った。
「あっ、パパ♪」
パパの顔が戻ってきた。
「もう時間だからバイバイするね。輝夜、パパにキスをして」
輝夜はパパの口にキスをした。
「愛してるよ」
パパが笑顔で手を振ると、輝夜も一生懸命手を振った。
しかし、3秒後にザーという音と斜めの線しか見えなくなり、輝夜はまた泣きそうになった。
それをなだめるように宙子は輝夜を後ろから抱きしめて、語りかけた。
「パパは、お月様でお家を作っているのよ」
「本当?」
一転して輝夜がにっこりと笑い、「お月様のお家に輝夜も住みたい」と満月に向かって小さな指を差した。
「パパみたいに宇宙飛行士になったら、輝夜も行けるよ」
「うん。輝夜もパパみたいになる」
二人が見上げた満月が、パパの笑顔のように輝いた。
📄 📄
「早くご飯を食べて歯磨きしようね」
中々食べ終わらない娘の輝夜に向かって、素羅宙子が急かした。
「パパに会えるって本当?」
輝夜は宙子の顔を覗き込んだ。
「本当よ。今夜会えるわよ」
「わ~い、わ~い、パッパと会える、会えるんだ♪」
輝夜は宙子の周りをぐるぐる回って、歌うように何度も同じ言葉を続けた。
それを笑みを浮かべて見ていた宙子は、輝夜に歯磨きをさせてからベランダへ連れ出した。
「パパは、あそこにいるのよ」
夜空を指差した。
「どこ? どこにいるの?」
「あそこよ、あそこ」
「お月様?」
「そう、そこにパパはいるのよ」
「あんなに遠いとこに……」
輝夜は宙子の手を握った。
「あそこからパパが来るの?」
とても不安そうに言った。
「そうよ。もうすぐ会えるからね」
*
「輝夜、パパだよ」
「パパ~」
輝夜は、パパに向かって手を振った。
「元気かい?」
輝夜は大きく頷いた。
「ママの言うことを聞いて、よい子にしてるかい?」
もっと大きく頷いた。
「とってもいい子よ」
宙子が微笑んだ。
「もっとよく顔を見せておくれ」
輝夜が近づいた。
「ピンクのリボンが可愛いね」
輝夜は嬉しくなってリボンで結んだ髪をくるんとしたが、次の瞬間、輝夜の視界からパパの顔が消えた。
「パパがいなくなった……」
宙子に向かって半べそをかいた。
「大丈夫よ、心配しないで。すぐに戻るからね」
輝夜を後ろから抱きしめた。
「パパ~」
輝夜の呼びかけに応えるように、パパの顔が戻ってきた。
「ごめんね、もう大丈夫だからね」
輝夜はパパの顔を触った。
その瞬間、また、輝夜の視界からパパの顔が消えた。
「パパ~」
今度は呼びかけても、パパの顔は消えたままだった。
「ママ~」
輝夜の目から大粒の涙がこぼれた。
「大丈夫よ。少し待てば会えるからね」
宙子は輝夜の涙を指で拭った。
「あっ、パパ♪」
パパの顔が戻ってきた。
「もう時間だからバイバイするね。輝夜、パパにキスをして」
輝夜はパパの口にキスをした。
「愛してるよ」
パパが笑顔で手を振ると、輝夜も一生懸命手を振った。
しかし、3秒後にザーという音と斜めの線しか見えなくなり、輝夜はまた泣きそうになった。
それをなだめるように宙子は輝夜を後ろから抱きしめて、語りかけた。
「パパは、お月様でお家を作っているのよ」
「本当?」
一転して輝夜がにっこりと笑い、「お月様のお家に輝夜も住みたい」と満月に向かって小さな指を差した。
「パパみたいに宇宙飛行士になったら、輝夜も行けるよ」
「うん。輝夜もパパみたいになる」
二人が見上げた満月が、パパの笑顔のように輝いた。
📄 📄