人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
♪ 2018年 ♪
「送別会も最終日の花束も用意していませんが、最後の挨拶はされますか?」
トイレを出たところで支社長からそう言われたのは、最終出社日の1週間前だった。
その瞬間、〈ぞんざい〉という言葉が浮かんできた。
〈邪険〉という言葉も浮かんできた。
それにしても、あんまりだ。
会社のために尽くし続けてきた自分が最後にこんな仕打ちを受けるなんて、
信じられない思いで支社長の言葉を反芻した。
〈送別会なし。花束なし〉
心の中で呟いてから足元に目を落とすと、床がぐらぐら揺れているように感じた。
何か言いたかった。
しかし、何を言っても無駄なことはわかっていた。
こんな野郎に、
こんなクソ野郎に、
こんなド・クソ野郎に!
感情が昂ると、自分でもわかるほど腸が煮えたぎってグツグツと音を立て出した。
口を開けたら熱湯が飛び出しそうになった。
しかし、喧嘩をしても意味がないことはわかっていた。
誠意のない相手に何を言ったところで響くことはないのだ。
というより無駄なのだ。
腹を立てるだけ馬鹿々々しいのだ。
そう思うと、支社長の顔が糠に見えてきた。
思わずキュウリと茄子を突っ込みたくなったが、キュウリと茄子が〈勘弁してくれ〉と拒絶する姿が思い浮かんだ。
その途端バカバカしくなった。
怒りはどこかへ行ってしまった。
こんな糠野郎のことなんか、もうどうでもよくなった。
「挨拶はしない」
わたしは支社長の目を見ずに言った。
「わかりました」
支社長はトイレのドアを開けて中に入った。
「送別会も最終日の花束も用意していませんが、最後の挨拶はされますか?」
トイレを出たところで支社長からそう言われたのは、最終出社日の1週間前だった。
その瞬間、〈ぞんざい〉という言葉が浮かんできた。
〈邪険〉という言葉も浮かんできた。
それにしても、あんまりだ。
会社のために尽くし続けてきた自分が最後にこんな仕打ちを受けるなんて、
信じられない思いで支社長の言葉を反芻した。
〈送別会なし。花束なし〉
心の中で呟いてから足元に目を落とすと、床がぐらぐら揺れているように感じた。
何か言いたかった。
しかし、何を言っても無駄なことはわかっていた。
こんな野郎に、
こんなクソ野郎に、
こんなド・クソ野郎に!
感情が昂ると、自分でもわかるほど腸が煮えたぎってグツグツと音を立て出した。
口を開けたら熱湯が飛び出しそうになった。
しかし、喧嘩をしても意味がないことはわかっていた。
誠意のない相手に何を言ったところで響くことはないのだ。
というより無駄なのだ。
腹を立てるだけ馬鹿々々しいのだ。
そう思うと、支社長の顔が糠に見えてきた。
思わずキュウリと茄子を突っ込みたくなったが、キュウリと茄子が〈勘弁してくれ〉と拒絶する姿が思い浮かんだ。
その途端バカバカしくなった。
怒りはどこかへ行ってしまった。
こんな糠野郎のことなんか、もうどうでもよくなった。
「挨拶はしない」
わたしは支社長の目を見ずに言った。
「わかりました」
支社長はトイレのドアを開けて中に入った。