人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 最初はフンフンとしか聞いてもらえなかった。
 しかし、何度も何度も繰り返すうちに耳を傾けてくれるようになった。
 そして遂に売場主任の口から「熱心だね」という言葉が飛び出した。
 感心したようにわたしを見て、「最初は的外れなことばかり言っていたけど、最近は結構役に立ちそうなことを提案してくれるようになったね」と優しい眼差しを向けてくれた。
 そして、「一度君の言う通りやってみようか。この売場の陳列を君に任すよ」と笑顔で包み込んでくれた。
 
 わたしは感激した。
 と同時に責任を感じた。
 提案を評価してもらったのは嬉しかったが、結果を出さなければ意味がないからだ。
 この売り場の売り上げが増えなければ主任に報いることはできない。
 そうなれば次はない。
 絶対に失敗はできないのだ。
 とはいえビビっても仕方がない。
 やるしかないのだ。
 うまくいくことを信じて主任に提案したプランを実行することにした。
 
 そのプランとは、自社商品のみならず他社の売れ筋商品を含めた総合的な売場作りだった。
 翌日の開店前に、各社イチ押しと思われるおでん種を本物の土鍋の中に入れてディスプレーした。
 視覚的な要素が加わることによって購買意欲が高まることを期待してのことだったが、出来上がった売場を見て、中々の出来栄えと一人で有頂天になった。
 
 
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