人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
「あ~、ジャズノート青山」
歌い終わった彼女は天井を見上げたまま、独り言のように呟いた。
「ここは、ジャズノート青山よね」
近くのギタリストに向かって、「私の頬をつねってみて」と左の頬を差し出す振りをした。
「やっと来ることができたわ」
吐息のような声が漏れた。
「私の親しいミュージシャンがみんな言うの。『ジャズノート青山は最高だぜ』って。『何が最高なの?』って聞いたら、『何が最高かって? すべてだよ、すべて。お客さんが最高、スタッフが最高、音響が最高、音響エンジニアが最高、それから、料理が最高、ワインも最高、つまり、すべて最高なのさ』って、みんながみんな言うのよ。でもね、私のスケジュールが空いている時はジャズノート青山には空きがない。ジャズノート青山に空きができた時は私がツアー中で忙しい。両想いなのに、すれ違ってばかりだったの。でもね、やっと夢が実現したの。ねえ、私の姿が見える? 私は幽霊なんかじゃないわ。だから、私の姿が見えるでしょ?」
すると、会場から大きな拍手が巻き起こった。
「My dream has finally come true」
彼女が晴れやかな表情を浮かべると、温かい拍手が彼女を包み込んだ。
応えるように彼女は笑みを浮かべたが、しかしすぐに真剣な表情になって話し始めた。
「夢は、いつか叶います。諦めなければ、必ずいつか叶います。皆さんも自分の夢を絶対に諦めないでください」
そして一人一人をじっと見つめるように、会場をゆっくりと見回した。
「今夜最後の曲を、私の大好きな曲を、今日お集まりいただいた皆様のために、そして、世界最高のジャズ・クラブ『ジャズノート青山』のために歌います。『Dream』」
*
公演が終わり、ジャズノート青山から駅に向かって歩いている時だった。
突然、妻がわたしの手に触れた。
そして、優しく握られた。
妻は前を向いたまま、微かに笑みを浮かべているようだった。
しばらく歩くと大きな交差点に差し掛かり、その手前を右折しようとした時、ブランドショップが集まるビルの上を光が走った。
流れ星だった。
間違いなく流れ星だった。
とっさにわたしは「ありがとう」と胸の内で呟いて妻の手を握り返した。
心からの感謝を込めて。
歌い終わった彼女は天井を見上げたまま、独り言のように呟いた。
「ここは、ジャズノート青山よね」
近くのギタリストに向かって、「私の頬をつねってみて」と左の頬を差し出す振りをした。
「やっと来ることができたわ」
吐息のような声が漏れた。
「私の親しいミュージシャンがみんな言うの。『ジャズノート青山は最高だぜ』って。『何が最高なの?』って聞いたら、『何が最高かって? すべてだよ、すべて。お客さんが最高、スタッフが最高、音響が最高、音響エンジニアが最高、それから、料理が最高、ワインも最高、つまり、すべて最高なのさ』って、みんながみんな言うのよ。でもね、私のスケジュールが空いている時はジャズノート青山には空きがない。ジャズノート青山に空きができた時は私がツアー中で忙しい。両想いなのに、すれ違ってばかりだったの。でもね、やっと夢が実現したの。ねえ、私の姿が見える? 私は幽霊なんかじゃないわ。だから、私の姿が見えるでしょ?」
すると、会場から大きな拍手が巻き起こった。
「My dream has finally come true」
彼女が晴れやかな表情を浮かべると、温かい拍手が彼女を包み込んだ。
応えるように彼女は笑みを浮かべたが、しかしすぐに真剣な表情になって話し始めた。
「夢は、いつか叶います。諦めなければ、必ずいつか叶います。皆さんも自分の夢を絶対に諦めないでください」
そして一人一人をじっと見つめるように、会場をゆっくりと見回した。
「今夜最後の曲を、私の大好きな曲を、今日お集まりいただいた皆様のために、そして、世界最高のジャズ・クラブ『ジャズノート青山』のために歌います。『Dream』」
*
公演が終わり、ジャズノート青山から駅に向かって歩いている時だった。
突然、妻がわたしの手に触れた。
そして、優しく握られた。
妻は前を向いたまま、微かに笑みを浮かべているようだった。
しばらく歩くと大きな交差点に差し掛かり、その手前を右折しようとした時、ブランドショップが集まるビルの上を光が走った。
流れ星だった。
間違いなく流れ星だった。
とっさにわたしは「ありがとう」と胸の内で呟いて妻の手を握り返した。
心からの感謝を込めて。