人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 一転して幸せな気分になったわたしは、その夜お酒が進んだ。
 普段は缶ビール1本とグラスワイン1杯で済ますのだが、今夜はグラスをもう1杯お代わりをした。
 本当は社員から贈られたシャンパンを飲みたかったのだが、とてももったいなくて飲めなかった。
 宝物なのだ。
 簡単に開けることなんてできるはずがない。
 だから、その代わりと口実を付けていつもの安ワインをお代わりしたのだ。
 
「いいことがあって良かったわね」
 その口調は、〈今日はどんどん飲んでもいいわよ〉というように感じられたので、更に気分が良くなってもう1杯飲むことにした。
 
 3杯飲むとさすがに回ってきた。
 ふわ~っとした感じになって心が緩んだ。
 そのせいか、なかなか言い出せなかったことを切り出すことができた。
「そろそろアルバイト辞めたらどう?」
 家のローンは払い終わっていた。
 年金も満額支給が始まっている。
 これ以上妻に苦労を掛けるのは忍びなかった。
「そうね……」
 妻は思案顔だった。
「続けたかったら辞めなくてもいいけど」
「そうね……」
 妻は、同じ言葉を繰り返した。


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