人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 妻は毎日何をしていたのだろう?
 その問いはベッドの中まで続き、まんじりともせずに妻のことを考え続けた。

 結婚したのは、わたしが31歳で、妻が28歳の時だった。
 わたしの知人の紹介でお見合いのようなことをして、半年ほど付き合ってプロポーズをした。
「結婚してください」という陳腐な言葉だったが、「はい」とすぐに受け入れてくれた。
 新婚旅行は妻の希望で沖縄に行った。
 2泊3日の短い旅だった。
 本当は海外へ行きたかったらしいが、仕事の関係で長く休むことができなかったわたしに遠慮して沖縄を選んだというのが真相だった。
 しかし、それでも「楽しかった」と喜んでくれた。
 
 妻は結婚を機に仕事を辞めて専業主婦になった。
 当時はそういう女性が多かった。
 妻はひとりっ子だったので子供を欲しがったが、残念ながら子宝に恵まれることはなかった。
 でも、どちらが原因かは調べなかった。
 原因がわかったからといってどうなるものでもないと思っていたからだ。
 今なら色々な手を打つことができるが、当時はそんなことを考えもしなかった。
 排卵に合わせてセックスをすることしか思いつかなかった。
 だから、ただひたすら排卵日前後のセックスに集中し続けた。
 そんな状態だったので、結婚以来わたしは一度もコンドームを付けたことがなかった。
 それが男にとって羨ましいことなのかどうかはわからないが、妊娠するためにはわたしの精子と妻の卵子が出会わないといけないので、とにかく精子を注ぎ込み続けたのだ。
 しかし、妻が妊娠することはなかった。
 それが続くと、次第に自分のせいだと思うようになった。
 貧弱な肉体のわたしの精子がパワフルなわけはなく、卵子に到着する前に死に絶えているのではないかと思うようになったのだ。
 だから、妻の卵子に問題があるなどとは一度も考えたことはなかった。
 ぽっちゃりとして健康そのものの妻に問題があるはずはなく、検査はしなかったが、すべての原因は自分にあると信じ込んでいた。


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