人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 わたしたちが泊まるのは、ヌメアの中心部ではなく、アンスバタ。
 ヌメア市内から車で15分くらいの距離にある有数のリゾート地。
 しかし、予算に限りのあるわたしたちは高級ホテルには泊まれない。
 だから、人気のビーチから少し離れたところにある小さなコテージを予約していた。
 食事は付いていないので自炊か外食。
 でも、それで何も問題はなかった。
 贅沢をしに来たのではない、のんびりしに来たのだ。
 
 コテージの中は、トイレ、シャワー、小さなキッチン、小さな冷蔵庫、エアコン、そして、ベッドルーム、それがすべてだった。
「あっ、ハイビスカス♪」
 ベッドルームに先に入った妻の声が弾んだ。
 真っ赤なハイビスカスがベッド一面を覆っていた。わたしは1脚しかない椅子に座って、しばしその様子を楽しんだ。
 
 コテージの外に出ると、小さなベランダがあった。
 そこには丸くて白いテーブルと、同じく白い椅子が2脚置かれていた。
「食事はここね」
 妻がテーブルに腰かけて足を組んだ。普段そんなことはしない妻のはしゃいでいる姿が可愛らしかった。
「新婚旅行みたい♪」
 妻は海を見つめて微笑んだ。


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