人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 久々に原稿に向かうと、気持ちがグッと引き締まった。
 背筋を伸ばして顎を引いて、赤いボールペンを持って推敲を始めた。
 
 誤字脱字を直していると、漢字の使い方が気になり始めた。
 簡単な漢字なのだが、色々な読み方がある漢字だ。
 
 例えば、『何』
 訓読みで『なに』と『なん』があり、音読みで『か』がある。問題は訓読みだ。
(なに)かおかしいと思った。しかし、それが(なん)なのかわからなかった』という場合の『何』の使い方がしっくりこないのだ。
 もちろん、ルビを振れば問題はないのだが、こんな簡単な漢字にルビを振るのはどうかな、と思ってしまうのだ。
 
 それから、『後』
 訓読みで『のち』『あと』『うし(ろ)』『おく(れる)』があり、音読みで『ご』と『こう』がある。
『その後、1時間ほどかけて一人で公園を散歩した』という場合、『ご』でもいいし『のち』でもよいように思う。
 しかし、作者がどちらの読みで使ったのか読者にはわからない。
『そのご』と読む人もいれば、『そののち』と読む人もいるだろう。
 これもルビを振れば問題ないのだが、それでいいのかといえば、そうとも思えない。
〈勝手に読んでもらったらいいんだよ〉という意見もあるかもしれないが、それはちょっと違うと言わざるを得ない。

 さて、どうしたものか……、
 しばし沈思黙考した。
 しかし、結論は出なかった。
 何冊か本を調べたが、そんなことを書いているものは見つけられなかった。


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