人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 開店して30分ほど経った頃、小さな子供を連れた若い母親が特陳コーナーで立ち止まった。
 
「ハンバーグにしようか」

「やった~、ハンバーグ♪」

 小さな子供が嬉しそうにはしゃいだ。
 それを見た母親が頷いて、はんぺんと鮭フレークをカゴに入れた。
 それは、自分が提案した商品が初めて売れた瞬間だった。
 
 体が固まって動けなくなった。
 そのうち、何か今までに経験したことのないような気持ちになってきた。
 じわ~っと体の中から喜びが湧き出してきた。
 
 嬉しいな~、
 
 こんなに感激するなんて、こんなに最高の気持ちになるなんて、思ってもみなかった。
 
 その日は何十人も特陳コーナーに立ち止まり、そして、多くの人が買ってくれた。
 結果を報告すると、売場主任から賞賛と労いの言葉をもらった。
 これも嬉しかった。
 他人から褒められることの喜びを噛みしめた。
 仕事が面白くて面白くてたまらなくなった。
 その店だけでなく、担当したほとんどの店で売り上げが増え、店長や売場主任からの信頼を勝ち取っていった。


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