人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 いつもの始発電車に乗り込んだ。
 いつものように弱冷房車に乗り、いつものようにドア近くの吊革を握った。
 出発する時刻になると、いつものように混んできた。
 
 次の駅に停車すると、若い女性が乗り込んできた。
 リクルートスーツ姿だった。
 就職活動中だろうか、しきりにスマホで何かを確認していた。
 今日の予定だろうか、それとも、面接を受ける会社の概要を頭に叩き込んでいるのだろうか、真剣な眼差しで瞬きもせずにスマホに見入っていた。
 
 今年は人手不足の影響で売り手市場だという。
 早くから内定をもらっている学生も多いらしい。
 羨ましい話だ。
 わたしが就職活動をした頃は外国発の超ド級の爆弾が炸裂するという信じられないことが起こっていた。
 それによって深刻な景気後退に陥り、就活生は見通しのまったく立たない真っ暗闇の中でもがく(・・・)ことを余儀なくされた。
 目を瞑ると、当時のことが蘇ってきた。
 
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