人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
「ねえ、あの店で買わない? 誕生日だから普段と違う贅沢なケーキ買いましょうよ」
家までの距離を半分ほど帰った時、妻は突然わたしの腕を取って商店街の方へ引っ張った。
急な方向転換に〈おっとっと〉という感じになったが、異論があるわけではなく、されるがまま妻に従った。
しばらく歩くと、その店が見えてきた。
わたしはその看板を見る度に笑ってしまう。
それほど面白い店名なのだ。
『スウィーツ、スウィーツ、ラン、ラン、ラン』
妻はこの店名がとても気に入っている。可愛くて大好きらしい。
店に入ると、顔見知りの店員が妻に挨拶をして何やら話し始めたが、わたしはその輪に入らず、ショーケースの中の色とりどりのケーキに魅入られていた。
すると、いつの間にか横に立った妻が「なんにする?」と声をかけてきた。
しかし、まだ決められなかったので、考える時間を稼ぐために、妻に振った。
「君から先に決めて」
「いいの?」
誕生日だからわたしが先に決めるものとばかり思っていたのだろう、ちょっと驚いたような表情になったが、それでも「そうね~」と顔を綻ばせてガラスケースに右手の人差し指を這わせながら品定めを始めた。
「これ」
彼女の指が止まったところにあったのは、『7種のフルーツタルト』だった。
お目当てのものが見つかったようで、一瞬、目が輝いたように見えた。
「あなたは決まった?」
わたしは首を振った。
実は決まっていたのだが、先を越されてしまったのだ。
同じものを頼むのは芸がないので、また振出しに戻って探し始めた。
「そうだな~」
妻と同じ様に右手の人差し指をガラスケースに這わせて1個1個見ていった。
すると、見逃していたものが目に入った。
「これにする」
指差したのは『ベリー・ハッピー』という名前のケーキだった。
ブルーベリーとブラックベリー、ラズベリーとストロベリーが華やかに盛り付けられたケーキで、スポンジにはラム酒が香っているらしい。
「お持ち帰りの時間はどれくらいですか?」
店員は保冷材の準備をしようとしたが、妻はそれを手で制してわたしに向き合った。
「ねえ、ここで食べていかない?」
妻が指差した店の奥には、誰も座っていない二人掛けの小さなテーブルがあった。
「いいね、そうしよう」
わたしは即座に反応して、急いで席を確保した。
妻はまだカウンターにいて、店員に何か言っていた。
店員は何度も頷いていた。
家までの距離を半分ほど帰った時、妻は突然わたしの腕を取って商店街の方へ引っ張った。
急な方向転換に〈おっとっと〉という感じになったが、異論があるわけではなく、されるがまま妻に従った。
しばらく歩くと、その店が見えてきた。
わたしはその看板を見る度に笑ってしまう。
それほど面白い店名なのだ。
『スウィーツ、スウィーツ、ラン、ラン、ラン』
妻はこの店名がとても気に入っている。可愛くて大好きらしい。
店に入ると、顔見知りの店員が妻に挨拶をして何やら話し始めたが、わたしはその輪に入らず、ショーケースの中の色とりどりのケーキに魅入られていた。
すると、いつの間にか横に立った妻が「なんにする?」と声をかけてきた。
しかし、まだ決められなかったので、考える時間を稼ぐために、妻に振った。
「君から先に決めて」
「いいの?」
誕生日だからわたしが先に決めるものとばかり思っていたのだろう、ちょっと驚いたような表情になったが、それでも「そうね~」と顔を綻ばせてガラスケースに右手の人差し指を這わせながら品定めを始めた。
「これ」
彼女の指が止まったところにあったのは、『7種のフルーツタルト』だった。
お目当てのものが見つかったようで、一瞬、目が輝いたように見えた。
「あなたは決まった?」
わたしは首を振った。
実は決まっていたのだが、先を越されてしまったのだ。
同じものを頼むのは芸がないので、また振出しに戻って探し始めた。
「そうだな~」
妻と同じ様に右手の人差し指をガラスケースに這わせて1個1個見ていった。
すると、見逃していたものが目に入った。
「これにする」
指差したのは『ベリー・ハッピー』という名前のケーキだった。
ブルーベリーとブラックベリー、ラズベリーとストロベリーが華やかに盛り付けられたケーキで、スポンジにはラム酒が香っているらしい。
「お持ち帰りの時間はどれくらいですか?」
店員は保冷材の準備をしようとしたが、妻はそれを手で制してわたしに向き合った。
「ねえ、ここで食べていかない?」
妻が指差した店の奥には、誰も座っていない二人掛けの小さなテーブルがあった。
「いいね、そうしよう」
わたしは即座に反応して、急いで席を確保した。
妻はまだカウンターにいて、店員に何か言っていた。
店員は何度も頷いていた。