人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 東京支社を管轄する本社の役員は月に一度だけ支社に来ていた。
 来てはいたが、それはお座なりとしか言えなかった。
 その役員は支社には興味がなかったからだ。大
 事なのは本社だけだった。
 本社のトップの顔色を窺うことが最も大事だったのだ。
 
 本社のトップはワンマンとして君臨していた。
 自分と意を異にする役員や社員は遠ざけられ、特に、能力が高く人望が厚い役員には冷たく当たった。
 その結果、優秀な役員は追い出されるように他社へ移っていった。
 だから、東京支社を管轄する役員は本社を不在にするわけにはいかなかった。
 自分がいない間に何があるかわからないからだ。
 
 そんな状況を熟知している支社長は本社の役員が来た時に丁重にもてなした。
 高級レストランでの食事と高級クラブでの豪遊という社内接待を繰り返した。
 そして、歯の浮くようなお世辞で役員を舞い上がらせた。
 すると、「支社のことは全部君に任せるから」と丸投げするようになり、東京支社へのチェックは皆無になった。


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