人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 パワハラだけではなかった。
 総務課の女性社員が上司に妊娠を告げた時、それは起こった。
 その上司は支社長と長い付き合いのある取り巻きの重鎮だった。
 
「妊娠? じゃあ、辞めるんだね。すぐに君の後釜を探さないとね」

「えっ、辞めるって……、私は出産後も働き続けるつもりです」

「うそっ、辞めないの? 勘弁してよ」

「勘弁してって……、どういうことですか」

「出産休暇、育児休暇、時短勤務、それって、他の社員にどれだけ迷惑がかかると思ってんの。ただでさえ人が足りないのに、総務課の仕事が回らないだろ」

「わかっています。でも……」

「わかってるなら辞めてよ」

「でも、働き続けたいんです」

「なに言ってんの。子供を産んだら、母親として一日中子供の面倒を見るのが一番なんだよ。会社を辞めて子育てに専念しなさい」

 そこまで言われたら辞めるしかなくなり、失意のうちに会社を去っていった。
 しかし、それは総務課にとどまらず他の課でも行われた。
 まるで支社長が指示したかのように同じ対応が繰り返された。
 妊娠した女性に対する大人のいじめが横行した。
 
 
 
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