人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 支社長に就任して半年が過ぎた頃、上司から虐めを受けて傷つき自宅療養していた男性社員が、一人二人と戻ってきた。
 そして、妊婦ハラスメントで辞めざるを得なかった女性社員も、出産を経て復職してきた。確実に社内の空気は明るくなっていった。
 
 仕事に復帰した30代の男性社員から出社当日にメールが届いた。
「多大なお力添えをいただき、本当にありがとうございました。心より御礼申し上げます。
 もう仕事に戻るのは無理だと諦めていました。前支社長から受けた酷い言葉が頭に浮かぶ度に吐き気を催し、実際に何回も吐きました。夜も眠れず、ふらふらと、夢遊病者のような毎日でした。そのうち自分を責めるようになりました。こんな弱い自分だからいけないんだと、自分の存在価値を疑うようになりました。自分なんて、自分なんていなくてもいいんだ、毎日そう思って生きていました。そして遂に絶望が襲ってきました。深い闇の中で、こう考えるようになりました。もう生きていても仕方がないと。
 そんな時でした、支社長が家に来られたのは。支社長の温かい言葉がなかったら、私は自らの手で命を絶っていたかもしれません。ギリギリのところでした。
 まだ心の安定は得られていませんが、なんとかやっていけると思います。道は長いと思いますが、温かく見守っていただければ幸いです。本当にありがとうございました」
 
 
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