人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 初めてのことなので結構時間がかかったが、望んでいた通りのものが出来上がったので、契約社員を全員集めて新たな日報システムの概要を説明した。
 その中で、〈イイネ!〉ボタンと〈サンキュー!〉ボタンのクリックの件も伝えた。
 
 契約社員の反応は悪くなかった。
 なにか面白そうなことが始まることへの期待感が漂っていた。
 上手くいくかもしれない、そう感じた。
 
 試験運用が始まると、予想外なことが起こった。
〈イイネ!〉ボタンをクリックした人が、その情報元の人に具体的なやり方を聞きに行くようになったのだ。
 それによって直接のコミュニケーションが生まれた。
 そして、その通りやって上手くいくと、〈サンキュー!〉ボタンをクリックするだけでなく、その情報元の人に直接「ありがとう」と言いに行くようになった。
 すると、契約社員同士の会話が増え、中には、店舗に同行して協力して売場を作ったり、一緒に試食即売会を実施する者も出始めた。
 明るい笑い声が出始めた広域量販課の売り上げがどんどん伸びていった。
 
 それだけではなかった。
 退職する契約社員が減り、退職者補充のための新人への導入教育の負担が大幅に減った教育研修課が年俸制契約社員への教育に力を入れ始めると、取引先への情報提供量が大幅に増えた。
 その結果、売り上げは更に伸びていった。
 
 加えて、契約社員の日報情報からより顧客目線に立った新たな販促策が生まれるようになった。
 それは、現場情報の重要性に気づいた販売促進課の社員が契約社員と同行して店舗へ行くようになったことから始まった。
 今まで会社の外へ出かけようとしなかった販売促進課の社員が積極的に取引先と面談し、その情報を基に顧客心理を重視した販促策を考えるようになったのだ。
 会社の歯車が前へ前へと回り始めた。
 
 
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