人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
        ♪ 2008年~ ♪

 順調に売り上げを伸ばしていた東京支社に、思いもよらぬところから、とんでもないものが襲いかかってきた。
 リーマン・ショック! 
 それは見たこともないような怪物だった。
 
 2008年9月15日、アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻した。
 東京支社長になって5年目、55歳の時だった。
 そのニュースをテレビで見ていたが、リーマン・ブラザーズに解雇された社員が自分の荷物を段ボール箱に詰め、それを抱えて会社から出ていく姿が映し出されていた。
 原因はサブプライムローンが焦げついたことだった。
 
 サブプライムローン? 
 聞きなれない言葉だった。
 専門家の解説によると、普通なら家を買えない低所得の人に対して住宅ローンを組ませ、高い金利をつけて貸し出す仕組みのようだった。
 銀行が安易にお金を貸してくれる上に、ローンを返済できなくなっても家を引き渡すだけでそれ以上何も請求されないということもあり、自分の家を持つことなど考えたこともなかった低所得の人達が競って家を購入したのだという。
 その結果、アメリカに住宅バブルが起こったらしい。
 
 その説明を聞いてなんとなくわかったような気がしたが、きちんと理解できているかどうかは疑わしかった。
 金融工学という高度なテクニックが使われたそうだが、それについてはまったく理解できなかった。
 
 リーマン・ブラザーズは60兆円を超える負債総額を抱えて倒産した。
 当初、市場関係者はリーマンが倒産するとは思っていなかった。
 余りにも大きな影響が出るので、アメリカ政府が救済すると考えていたのだ。
 しかし、アメリカ政府は救済しなかった。
 そのため、異常事態という大波を受けたアメリカの株式市場は暴落し、一瞬にして全世界へ飛び火した。
 
 
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