人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 更に追い打ちをかけたのが、小売企業によるPB商品の開発強化だった。
 PBとはプライベート・ブランドの略で、ナショナル・ブランド(NB)と同等の物を、小売企業のブランド名でメーカーに作らせるものだ。
 
 PBの価格はNBよりも安い。
 ということは、メーカーからの仕入れ値も安い。
 かなり厳しい条件を突きつけられる。
 全量買い取りなので返品のリスクはないし、広告宣伝の必要もないが、小売企業によるメーカー支配力が増していく。
 つまり、メーカーが小売企業の下請けになる危険性が大きくなっていく。
 小売企業と対等のパートナーとして踏みとどまれるか、それとも、小売企業の従属物に成り下がるか、食品メーカーは運命の曲がり角に差し掛かっていた。
 
 そんな状況の中でわたしは焦っていた。
 大阪本社からの明確な指示を待っていたが、いつまで経っても対策が示されないのだ。
 売り上げ死守! ただ、これだけだった。
 
 出口のないデフレ、終わりなき消耗戦、この泥沼のような状態の中で手をこまねいている訳にはいかなかった。
 何かをしなければならなかった、何かを。
 
 しかし、本社は馬鹿の一つ覚えのように売り上げ死守を繰り返すだけだった。
 頑張れというだけだった。
 ケツを叩けばなんとかなるとでも思っているかのようだった。
 わたしは呆れてものも言えなくなり、本社への期待はゼロになった。
 しかしこのまま消耗戦を続けるわけにはいかなかった。
 終止符を打たないと大変なことになるのが目に見えているからだ。
 自らの力でなんとかしなければならないと腹をくくった。
 
 
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