人生 ラン♪ラン♪ラン♪ ~妻と奏でるラヴソング~ 【新編集版】
 妻に気持ちを打ち明けてすっきりしたわたしは、いわゆる〈針のむしろ〉を選ぶことにした。
 定年延長を選択するのだ。
 給料は支社長時の三分の一以下になるし、仕事はなかったが、それは覚悟の上だった。
 
 そんなことはどうでもよかった。
 とにかく常務や人事部長が喜ぶようなことはしたくなかった。
 5年間目障りな存在で居続けたかった。
 でもそれ以上に〈新たな人生設計〉に夢を膨らませていた。
 これからの5年間、給料を受け取りながら勉強できることをチャンスと捉えることにしたのだ。
 そのためには仕事がないのが都合がよかった。
 会社にささやかな復讐をしながら新たな道を切り開いていくのだ。
 
 予想した通り、後日着任した新支社長はわたしに仕事を与えなかったが、〈へ〉とも思わなかった。
 逆に、こっちの思う壺だとほくそ笑んだ。


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