トリックオアトリートな同期の日樫くんがあまくなる夜
「麻川さんだけ下の名前で呼ばれてるから」
「同期だからだよ」
とっさにそう答えた。私も気になってたけど、本人に理由を聞いたことはない。
「……そうですよね」
彼女は勝ち誇った笑みを浮かべて戻っていく。
私はこっそりため息をついた。
こういうことを聞かれるのは初めてじゃない。
彼女が恋敵なら、到底勝てない気がする。
彼女が日樫くんを好きだという噂は流れていた。
しょっちゅう彼に声をかけ、彼もいつも楽しそうに返しているから両想いかもしれない。嫉妬に苦しんだときもあるけど、最近は考えないようにしてやり過ごせるようになった。どうせ彼と私がどうにかなる日なんて来ないんだから、と。
「日樫さん、チョコいかがですか?」
金本さんの声にそちらを見ると、彼女が高級チョコを日樫くんに差し出していた。
「ありがとう、間に合ってる」
彼はにこっと笑って断る。
彼がいつも私にチョコをせびるから、彼はチョコが大好きだと知れ渡っている。
前回のバレンタインはすごかった。出勤したらすでに机にてんこ盛り。隙あらばと彼にチョコを渡すのは社員のみならず掃除のおばちゃんまで参戦。
彼は、みんなで食べましょう、と声をかけて配ってまわった。気持ちを無視してると怒られそうなのに顰蹙を買わないのはさすがの人徳だと思う。
考えても仕方ない、と思いながらペットボトルのお茶を飲む。
「同期だからだよ」
とっさにそう答えた。私も気になってたけど、本人に理由を聞いたことはない。
「……そうですよね」
彼女は勝ち誇った笑みを浮かべて戻っていく。
私はこっそりため息をついた。
こういうことを聞かれるのは初めてじゃない。
彼女が恋敵なら、到底勝てない気がする。
彼女が日樫くんを好きだという噂は流れていた。
しょっちゅう彼に声をかけ、彼もいつも楽しそうに返しているから両想いかもしれない。嫉妬に苦しんだときもあるけど、最近は考えないようにしてやり過ごせるようになった。どうせ彼と私がどうにかなる日なんて来ないんだから、と。
「日樫さん、チョコいかがですか?」
金本さんの声にそちらを見ると、彼女が高級チョコを日樫くんに差し出していた。
「ありがとう、間に合ってる」
彼はにこっと笑って断る。
彼がいつも私にチョコをせびるから、彼はチョコが大好きだと知れ渡っている。
前回のバレンタインはすごかった。出勤したらすでに机にてんこ盛り。隙あらばと彼にチョコを渡すのは社員のみならず掃除のおばちゃんまで参戦。
彼は、みんなで食べましょう、と声をかけて配ってまわった。気持ちを無視してると怒られそうなのに顰蹙を買わないのはさすがの人徳だと思う。
考えても仕方ない、と思いながらペットボトルのお茶を飲む。