地味顔シンデレラは王子様を調教す!【マンガシナリオ】

第二話 俺と付き合わない?

〇 千波の部屋

鏡に映る未来の千波と会話する千波。

千波「メイクですか⋯⋯でも、明日から急にメイクして学校に行ったら色気付いたと思われる⋯⋯」
未来の千波「色気付いた? 言わせてみなさいよ。あなたは別人のように美しくなって根本理一郎を落とすのよ」
千波「根本君? 藤堂尚弥王子じゃなくて?」
未来の千波「私の話聞いてた? 将来的に真の王子は根本理一郎なのよ。眼鏡を外して、身長も伸びて、都市銀行に勤めてる完璧な男!」
千波「と⋯⋯都市銀行?」

千波の言葉に未来の千波が大きく頷く

未来の千波「銀行員⋯⋯つまり、金の勘定ができるということよ。藤堂尚弥は御曹司として育った上に、ホスト時代は女から貢がれ完全に金銭感覚が狂ってるの」
千波「王子になら貢ぎたい⋯⋯」
未来の千波「甘い! 本当に激甘ね! これだから学生は! あなたは未来の王子の根本理一郎を競争率の低い今、青田買いしなさい。10年後にこの意味が分かるわ。さあ、そうと決まったらママのデパコスをくすねてきなさい! 今からメイクを教えるわ」

千波は戸惑いながらも、綺麗になりたい気持ちが上回り母親のデパコスを持って鏡の前に来る。

未来の千波「さあ、今から特訓よ。それから、髪の毛! ナイトキャップちゃんと付けて寝なさい。それができないなら、美容院でおしゃれショートに変えるの。千円カットじゃなくてね!」
千波「今は、千三百五十円ですよ。早くで上手です」
未来の千波「スポーティーな女子高生じゃなくて、手の届かない女にならなきゃいけないの! 変身したら、今は冴えないけれど将来王子になる根本君に突撃よ」

千波は大人しく未来の千波のスパルタメイクレッスンに従った。

千波「なんか、色々ありがとうございます。私がここで頑張っても未来の私には影響はないんですよね?」
未来の千波「その通りよ。でもね。私は幸せになった私を見てみたいだけ」
千波「今、幸せじゃないんですか?」
未来の千波「愛だけじゃ人は生きていけない。10年後に分かるわ。お金があるから愛は続くの⋯⋯」


未来の千波の姿が鏡から消える。

○学校・教室(朝)

千波の姿を見てざわつく生徒たち。
千波は胸まである髪をとりあえずブラッシングで艶を出し、言われた通りアジアンビューティーメイクをして現れた。

千波が席につくなり、近寄ってくる美奈子。

美奈子「千波! 凄く綺麗! ハリウッド女優が入ってきたのかと思っちゃった」
千波「流石に褒め過ぎだよ⋯⋯」
千波は照れながらも口元がニヤけてしまう。
確かに朝、鏡で見た自分は別人のように美しかった。

クラスの女の子たち「丸川さん。男ができたんじゃない、急に色気付いて」「昨日まですっぴんの引っ詰めヘアーだったよね」
クラスの女の子たちの声に落ち込んで、急に恥ずかしくなり俯く千波。

千波は不意に肩を叩かれて、振り向くと頬を染めた藤堂尚弥がいた。
尚弥「丸川千波、俺と付き合わない? 実は前からお前の事が気になっていた」

千波はクラスの皆の前で突然告白されて真っ赤になる。
周囲の生徒たちは大騒ぎしだす。

隣の席に静かに座る根本理一郎が見える。
根本理一郎はチビで眼鏡で影が薄く、席につくなり参考書を取り出している。
千波は昨日の未来の千波の言葉を思い出し、理一郎をまじまじと観察した。

尚弥は自分の方を見ていない千波に金髪をかきあげ、苛立った顔をする。


尚弥「返事は?」
千波「お断りします」
千波の予想外の返事に教室が静まり返る。

千波は未来の千波に言われた通り、席替えがされない内に根本理一郎に接近を試みようと考える。
千波「ねえ、根本君! その参考書どこの? 良かったら教えてくれる?」
根本理一郎「えっ? 貸そうか? 僕はもう一通り読んだんだ」

理一郎が参考書を千波に渡してくる。
千波は理一郎と初めて会話したが、その優しく柔らかな声に癒される。

千波「根本君って優しいんだね。学年一位の根本君にあやかって私も勉強頑張る」
理一郎「書き込みとかあるけど気にしないで」
千波「パラパラ漫画とか?」
理一郎「そんなの書かないよ」

柔らかく照れたように笑う理一郎に千波も微笑み返す。
頬を染める理一郎。

突然、腕を引っ張られて立ち上がさられて目を見開く千波。
そこには怒りを隠せない燃えるような瞳で彼女を見る尚弥がいた。
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